こんばんわ!バーテンダー里見です。

先日、DARK KNIGHTにオールドリキュールが多数入荷しました。

本日は、その中からピックアップして【ルクサルド】社の【サンブーカ】というお酒についてご紹介させて頂きます。

写真(上)…「ルクサルド・サンブーカ1980年代流通」

 

はじめに、ルクサルド社はイタリアのリキュールメーカーで、1821年ダルマチア地方ザラ市(現在ではクロアチア領になりザダル市と改名されている)にマラスキーノ・リキュールの専門蒸留所として設立されました。

写真(上)…「ルクサルド社のマラスキーノ・リキュール」

写真(上)…ルクサルド社のマラスキーノリキュールのラベルには1821年にザラ市で創業したことが描かれている

 

マラスキーノ・リキュールとはイタリア特産のマラスカ種のチェリーを原料とするリキュールで、元々はダルマチア地方で【神のお酒】として地元の人々の手により造られていた地酒のようなリキュールでした。

 

このマラスキーノリキュールが一躍脚光を浴びたのは、ナポレオン戦争(1796年~1815年)が起こった時代ヨーロッパの各地で武装、戦火が繰り広げられ、兵士たちが強い酒を求め広まったそうです。

 

しかし、戦争の終結と共に粗野でアルコール度数の強いだけのお酒であったマラスキーノリキュールは見向きもされなくなっていきます。

 

ルクサルド社はこのマラスキーノリキュールが暗雲の時代、貴族の生まれであった【ジロラモ・ルクサルド】氏と侯爵家の出身であるその妻によって、新しいタイプのマラスキーノリキュールの作成に挑戦してゆくことで始まります。

 

彼らは洗練された豊潤な香味を得るため、納得がゆくまで何度も蒸留実験を繰り返したと言われています。

 

完成から8年後、時の権威であったオーストリア皇帝から専用製造権をという特権を授与され、ルクサルドのマラスキーノリキュールは世界中に輸出され確固たる地位を確立しました。

 

ルクサルド社の象徴となるマラスキーノ・リキュールには一族のイタリアへの愛国心がボトルにも表現されており、ボトルキャップの赤、白いラベル、ボトルの緑の3色はイタリア国旗を表しています。

 

また、この特徴的なストローラッピングはルクサルドのブランドを印象付けるだけでなく、船で遠い異国の地に輸送される際に破損を防ぐ役割も持っており、他の業者も真似をするようになりマラスキーノの代名詞となっていったそうです。

 

1821年から続く古参のリキュールメーカーのルクサルド社ですが、1944年、第2次世界大戦時に蒸留所は英米連合軍により全壊してしまいました。

 

また反ファシスト派のパルチザンによってザダルに残ったイタリア人をファシストの支持者として粛清され、ルクサルド一族は4代目となる【ジョルジョ・ルクサルド】氏のみが生き残り、イタリアのトレリアに新しい蒸留所を建設(1947年)し、イタリアを代表する名酒として再び世界に輸出されることになっていきました。

写真(上)…ルクサルド社のマラスキーノリキュールのラベルには1947年からトレリアで製造をはじめたことが描かれている

 

そして、このルクサルド社が製造するサンブーカというお酒ですが、サンブーカはリキュール(混成酒)に属し古くから造られる無色透明のサンブーカと、20世紀後半に造られ始めた黒色のブラックサンブーカという種類に分けて呼称されます。

 

サンブーカの大きな特徴は香り成分としてアニスの種子が用いられ、核となる原料としてエルダーの花などが使用され、銘柄によって異なるその他のハーブやスパイスが使用されています。

 

この核となる「エルダー」はスイカヅラ科の植物で、日本名ではセイヨウニワトコと呼ばれております。

 

ニワトコは洋梨やマスカットのような香りが感じられ、ヨーロッパでは野原で咲く野の花として広く知られ、古くは魔除けとして使われていたそうです。

 

サンブーカの名前の由来には諸説あり、エルダーベリーを意味する「サンブークス・ニグラ」からという説や、エルダーのラテン名である「サンブカス」からきている、はたまたアラビア語で「花の香り」という意味の言葉が訛ったという説などがあり定かではありません。

 

このサンブーカを使用した世界的に有名なカクテルで【サンブーカ・コン・モスカ】というカクテルがあります。

では、サンブーカ・コン・モスカをおつくりしていきましょう

サンブーカを30mlグラスに注ぐ

コーヒー豆を三粒入れ

着火!

20秒ほど待ち、火を消します

完成です!

温めることでサンブーカのフルーティな香りが一層際立ちます。コーヒーの風味とも相性抜群です。

 

ちなみにこのカクテルで使用するコーヒー豆は三粒です。これには理由があり、それぞれ「健康」「幸福」「繁栄」を意味するそうです。イタリアでは偶数の数のコーヒー豆を提供すると不幸を招くという迷信があるので、必ず三粒で提供致します。

 

サンブーカ自体は甘めのリキュールですので、そのままお飲み頂いても、カクテルの材料としてもお召し上がりいただけます。

当店をお越しの際には、ぜひご賞味ください。